岩本個人教室 の日記
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筆順
2013.10.22
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2年ほど前のことです。もうすぐ受験という中学3年生が入塾してきました。
その子の漢字の筆順ときたら、でたらめで、どうしてそんな書き方ができるのかと思うほどでした。ところが、形は一応様になり、間違っていないのです。そして漢字はよく書けるのです。それにもまたびっくりしたのでした。
国語の学習には、文章を読み取ること、自分の考えを表現することなど大切なことが沢山あります。受験を直前に、試験では出題されることのない筆順を改めることなど、時間的に到底無理なことでした。正しく書けるのだから、目をつぶり筆順には触れないことにしました。
若い頃に私が教壇に立っていたときは、腕を挙げて筆順を説明したことは覚えていますが、机間を回って筆順の間違いを指摘した覚えがありません。
ところが、最近私の教室にやってくる低学年の子供には、筆順の出鱈目が目立ちます。そして、その間違いの傾向がとてもよく似ているのに気付きました。
よくよく観察してみると、漢字を絵画的に捕らえているようなのです。目立つところから、あるいは書きやすいところから、絵のように書き始めるようなのです。困ったことに一度そう書くと癖になって、改めることはなかなか難しいのです。
最近、小学1年生の子が入ってきました。ひらがなの「な」「ら」 は、点を最後に書きます。「ち」は横棒を後に書きます。小学校の先生に伺うと、「ひらがなのうちから書き順をちゃん書くことは、字には書き順があるのだということを認識させることになるので、無理のないところで書き順を覚えるよう指導したほうがよい」とのことでした。
低学年であれ、高学年であれ、筆順を余り喧しくいうと、漢字の練習が嫌になります。だから嫌にならない程度に、指摘することにしています。高学年になってから、一度ついた癖を直すことは至難の業です。小学1年生で書き方の基本を身につけて欲しいと痛感しています。
小学2年生の頃から私の塾に通い、今5年生になった子供がいます。最初は勉強が嫌で嫌でたまらず、塾には嫌々来ていることが手に取るようにわかる子でした。ご両親が「お前のためだと言って止めさせてくれない」と愚痴っていました。そんな状態が続いていましたが、ご両親は私をすっかり信頼して下さっていました。
ところが、5年生になってからは、少しずつですがしっかりと勉強するようになり、顔もきりっとしてきたように感じました。勉強嫌いだった頃は、漢字も鉛筆を軽く持って薄い字を弱々しく書いていましたが、最近では一画一画、力強くきちんときれいに書くようになりました。しかも、書き順が正しくなっていたのです。驚いて何度も何度も褒めました。
私は「英語力は単語力に比例するのよ」と中学生によく言います。漢字の書き順が国語力を左右するとまでは言いませんが、長年の経験から、書き順の正しさは論理的な考え方とか、要領の良さとか、生き方上手とかなどと何らかの関係があるのではないかと、感じています。